村田氏の画面作りにおける最大の武器は、極限まで歪みを計算し尽くした空間把握能力と超絶パース技巧にあります。多くの描き手が敬遠するような、極端な魚眼レンズ的パース(広角パース)や、上方・下方から見上げる極度のアオリ・フカン構図を、狂いなく正確なデッサンで成立させてしまう点に業界中が息を呑んでいます。
特筆すべきは、建造物やエフェクトのパースだけでなく、その空間の中に存在するキャラクターの人体デッサンが一切崩れない点です。骨格と筋肉の連動、衣服のシワにかかるテンション、さらには風圧や衝撃波による質量変化までが完全に計算されています。二次元の紙面でありながら、視線が奥から手前へと立体的に引きずり込まれるような圧倒的な被写界深度と視線誘導は、緻密な計算と研ぎ澄まされた空間感覚の賜物です。
また、構図内に配置される「破壊された瓦礫の破片」や「飛び散る火花」のひとつひとつに明確な運動方向と重力が与えられており、静止画であるはずの漫画から轟音や衝撃波がダイレクトに伝わってきます。この徹底した空間設計が、読者に「まるで映像を見ているかのような臨場感」を抱かせる核心的な理由です。