催涙スプレーを入手・自宅に保管すること自体は完全に合法ですが、一歩外へ持ち出すとなると話は別です。日本の法制度において、催涙スプレーの違法性は非常にデリケートな問題を孕んでいます。銃刀法上の「刀剣類」には該当しないものの、街頭での携帯は催涙スプレーが軽犯罪法(第1条第2号:正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者)に抵触する恐れがあります。
過去には、深夜に多額の現金を運搬していた会社員が護身用として催涙スプレーを隠し持っていた件で、最高裁判所(平成21年3月26日判決)が「正当な理由」を認めて無罪判決を下した有名な判例があります。しかし、この判決は「業務の性質上、危険に遭遇する具体的な蓋然性が極めて高かった」という個別具体的な背景を重視した極めて例外的な判断です。
一般的な通勤、通学、深夜のウォーキングであっても、職務質問で催涙スプレーが発見された場合、「単に防犯のため」という理由だけでは警察段階で正当な理由と認められず、没収や書類送検の手続きが取られるケースが後を絶ちません。護身用であっても、公共の場所で常時ポケットやバッグに忍ばせて歩く行為には、常に法的なリスクがつきまとうのが現実です。