ピンク映画やVシネマ、劇団「転形劇場」での沈黙劇を経て、北野武監督の映画『ソナチネ』『HANA-BI』で世界的な脚光を浴びた大杉漣さん。彼の演技の根底にあったのは、人間の弱さや狡さ、そしてどうしようもない温かさを丸ごと肯定する眼差しだった。
上質なヒューマンドラマにおいて、大杉さんが画面の片隅に座っているだけで、その場の空気は日常のリアルな匂いを帯びた。台詞のない瞬間でも、背中の丸まり方や煙草をくゆらす指先一つで男の人生を語ってしまう。大杉漣という俳優が今なお視聴者の心を掴んで離さないのは、作られた格好良さではなく、人間が生きることの泥臭さと美しさを誰よりも真摯に愛していたからに他ならない。