通常のおりものは透明から乳白色で、弱酸性の性質によって膣内を雑菌から守る「自浄作用」を担っています。しかし、生殖器の内部でごく微量の出血が生じると、赤血球に含まれるヘモグロビンが大気や膣内の酸性環境に触れてメトヘモグロビンへと酸化します。これが鮮紅色から赤褐色、さらには茶色へと変色し、分泌液と混ざり合うことで「茶色いおりもの」として排出されるのです。
臨床現場において、茶色い分泌物は「出血してから体外へ出るまでに一定の時間が経過した古い血液」であることを意味します。鮮血のような勢いのある出血ではなく、少量ずつ滲み出た血液が膣内に留まり、ゆっくりと流下してくるプロセスを経ています。
また、茶色いおりものにゼリー状の塊が混ざるケースも見られます。これは排卵期や月経前に頸管粘液の分泌量が急増し、粘度の高い粘液が酸化した血液を巻き込んでゼリー状の凝固物として排出されたものです。生理的な分泌パターンの範疇である場合がほとんどですが、塊がピンポン玉大に肥大化していたり頻繁に排出されたりする場合は器質的病変を警戒する必要があります。
さらに、自律神経を乱す強い精神的負荷や過度の疲労は、茶色いおりもののストレス原因として極めて頻繁に確認されます。脳の視床下部や下垂体はホルモン分泌の司令塔ですが、強いストレスに晒されるとエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌バランスが破綻し、子宮内膜が不完全な状態で微量に剥がれ落ちる「機能性不正出血」を引き起こします。