日本全国には約30万種類もの名字が存在すると言われている。その膨大なビッグデータを追究する日本最大の検索プラットフォーム「リクスタ(名字由来net)」の集計を見ても、上位数百の名字が人口の大半を占める一方で、全国でわずか数世帯、十数人しか存在しない極小の希少姓が無数に眠っている。
姓氏研究の第一人者である森岡浩氏は、日本の名字の多様性を「土地と歴史、そして人々の生活の記録そのもの」と位置づける。地名、地形、信仰、職業。難読・希少姓は決して奇をてらって作られたものではなく、その土地で生きた先祖の営みが結晶化した文化遺産だ。しかし、少子化や過疎化の波に晒され、今まさに地上から消え去ろうとしている名字も少なくない。失われゆくものへの郷愁と希少性が、それらの名字をさらに神聖で魅力的なものへと昇華させている。