創作料理という発想は、決して日本独自の思いつきから生まれたものではありません。その原点は、1970年代のフランスで巻き起こった「ヌーベルキュイジーヌ(新しい料理)」のムーブメントにまで遡ることができます。
当時のフランス料理界では、濃厚なバターや小麦粉のルーを多用する重厚な古典主義への反省から、ポール・ボキューズら名シェフたちが「素材本来の鮮度や風味を生かす軽やかな調理」を提唱しました。このとき決定的なインスピレーションを与えたのが、日本の懐石料理が持つ美意識や器の活用法、盛り付けの引き算の美学でした。西洋料理が東洋の感性を取り入れて革新を起こしたこの歴史こそが、現代の創作料理の源流といえます。
日本国内に目を向けると、1980年代後半のバブル経済期に「無国籍料理」というキーワードで最初のブームが到来しました。さらに1990年代後半から2000年代にかけて、内装にこだわりデザイナーズ空間を演出した「創作和食」や「創作居酒屋」が都市部を中心に爆発的に普及します。従来の赤提灯居酒屋とは一線を画すスタイリッシュな空間で、チーズやバルサミコ酢を使った和食を提供するスタイルは、若者や女性客の圧倒的な支持を集め、外食産業の一大カテゴリとして定着していきました。