「少し横になれば治るだろう」という甘い考えは捨てたほうがいい。船酔いの医学的名称は「動揺病」だ。目から入る視覚情報と、内耳の三半規管が感知する揺れのギャップによって脳が混乱し、自律神経系が激しく崩壊していく現象である。
日本耳鼻咽喉科学会の知見によれば、動揺病が悪化すると交感神経と副交感神経のバランスが著しく乱れ、血圧低下や冷や汗、重度の嘔吐を引き起こす。さらに、何度も嘔吐を繰り返すことで体内の水分と電解質が急速に失われ、深刻な脱水症状に陥る。水分補給すら受け付けなくなった身体は、やがて急性腎不全や血圧の急激な低下を起こし、心肺機能の不全へと追いやられていくのだ。