恐竜を描く際、細かなウロコや筋肉の筋から描き始めてはいけない。まず捉えるべきは「ソラマメ」と「円」の組み合わせだ。頭部に丸を描き、胴体には傾けたソラマメをひとつ。それらをしなやかな曲線で繋ぎ、太ももに大きな卵型を配置する。このシンプルな骨格デフォルメさえ確立できれば、全体の骨組みは1分足らずで完成する。あとはアウトラインをなぞり、細部を肉付けするだけだ。
さらに、仕上がりを決定づける「見落としがちな3つの描き分けポイント」を押さえておきたい。
第一に、顎のヒンジとマズルの厚みだ。肉食恐竜であるティラノサウルスを描くなら、マズル(鼻先)を角ばらせ、目の後ろに大きな顎の筋肉スペースを確保する。逆に草食恐竜を描く場合は、頬のラインを柔らかく丸め、穏やかな嘴(くちばし)のラインを意識するだけで、種族の個性が一瞬で浮き彫りになる。
第二に、二足歩行と四足歩行における重心バランスである。ティラノサウルスなどの二足歩行タイプは、頭部と長い尾がシーソーのように釣り合う「水平姿勢」を保つのが現代の定説だ。上体を過度に起こさず、股関節の真上に重心を置くことで、倒れそうな違和感を完全に排除できる。
第三に、前足の向きと皮膚の質感差だ。例えば獣脚類の前足(手)は、人間のように手のひらを下に向けるのではなく、「拍手をするように内側を向かい合わせる」のが近年の生物学的に正しい描き方である。これに加えて、羽毛を連想させる柔らかなギザギザ線や、装甲を思わせる丸いプレートを背中に散らすだけで、イラストの説得力は劇的に跳ね上がる。