この特異なキャラクターを生み出したのは、漫画家であり詩人でもあったやなせたかしだ。彼の創作の根底には、第二次世界大戦での過酷な従軍体験と、敗戦直後の強烈な飢餓の記憶が横たわっている。
戦場において、昨日までの「正義」は一夜にして「悪」へと引っくり返った。国や政治、思想が掲げる正義がいかに脆く独善的であるかを、やなせは身をもって痛感したという。だが、どれほど時代や価値観が変わろうとも、決して揺らがない絶対的な正義が一つだけある。それは「飢えて死にそうな人に食べ物を届けること」だった。
戦争の惨禍を知るからこそ、やなせが描くヒーローは敵を力で屈服させる快感を拒絶した。真の正義を行う者は、自分自身も深く傷つかなければならない。顔をちぎらせるというグロテスクとも取れる自己犠牲の描写は、戦争の飢えを骨の髄まで知る表現者が絞り出した、切実な反戦と平和への叫びだった。