作品の根底に流れているのは、原点への強烈なリスペクトだ。原作者であるモンキー・パンチが描いた初期コミックの持つ、乾いたニヒリズムと危険な色気。それらが本作では見事な純度で蘇る。道徳や正義の枠組み組みをあざ笑うかのようなピカレスクの美学が、スクリーン全体を支配しているのだ。
同時に、フランスの文豪モーリス・ルブランが生み出した元祖アルセーヌ・ルパンの精神性への回帰も見逃せない。欧州の湿り気を帯びた空気感、歴史の裏側に隠された遺産、そして貴族社会の欺瞞を暴くアンチヒーローの矜持。二人の偉大な作家のDNAが、21世紀の映像言語によってかつてない密度で融合を果たしている。