この「紫の濁り問題」は、初等教育の図工現場のみならず、美術大学の油絵科やイラストレーションの制作現場でも長年繰り返されてきた定番の壁です。大手SNSやQ&Aプラットフォームを調査すると、毎年春の入学シーズンや夏休みの宿題時期になると、混色に関する悲痛な叫びが散見されます。
「アジサイやブドウの絵を描こうとして、絵の具の赤と青を混ぜたら泥水のようなドブ色になった」「子供に『綺麗な紫はどうやって作るの?』と聞かれて手持ちのチューブで実演したら、黒ずんで答えに窮した」といった投稿は枚挙にいとまがありません。美大予備校の指導経験者や色彩設計の専門家への取材・手記によると、現場では初期段階で「12色セットの『赤』と『青』は絶対に混ぜるな」と厳しく指導されるケースすら珍しくないといいます。
現代のプロクリエイターや熟練の水彩画家たちは、濁りのない水彩絵の具の綺麗な紫色を得るために、標準の「赤(ポスターレッド等)」をあえて使用しません。代わりに、顔料構造として黄色味を一切排除した「キナクリドンマゼンタ(PR122)」や「オペラ」、そして青側には赤味寄りの「フタロシアニンブルー」や「ウルトラマリン」を選択しています。現場のプロたちは経験則から「混色で濁るのは腕前の問題ではなく、絵の具の分子設計と顔料選定のミスである」と口を揃えます。