チンドン屋とは、鉦(かね)や太鼓、管楽器などを打ち鳴らしながら街頭を練り歩き、店舗の開店、特売、商品、各種イベントなどを人々に直接アピールする日本の伝統的な請負広告業です。その名称は、独特の打楽器が奏でる「チンチン」「ドンドン」という擬音に由来しています。
広告代理店がデジタルバナーや動画広告を配信するように、チンドン屋は「街そのもの」をメディアに変えるプロフェッショナル集団です。そのビジネスモデルは極めて明快で、依頼主(商店主やイベント主催者など)から請負料(ギャランティ)を受け取り、指定されたエリアを指定された時間、演奏とパフォーマンスを交えながら巡回します。単に音楽を鳴らすだけでなく、巧みな口上で道行く人々の関心を引きつけ、手渡しでチラシ(ビラ)を配り、時には観客との軽妙な会話で店舗の魅力を刷り込んでいきます。
なぜあそこまで派手な衣装を着るのかといえば、理由はストリートマーケティングの原点にあります。江戸から明治、昭和初期にかけての雑踏において、数秒で通行人の視覚を奪うためには、日常の風景から完全に浮き立つ異形(いぎょう)の姿が必要でした。歌舞伎の道化役や時代劇の町人、鳥追いやピエロなどを模した原色使いの着物は、瞬時に群衆の注意を惹きつける「歩くアイキャッチ広告」として緻密に計算された演出なのです。