赤ちゃん取り違え事件は、家族の本質である「血縁か、過ごした時間か」という根源的な問いを社会に突きつけ、ノンフィクション書籍や映像作品の題材にもなってきました。
世界的な評価を受けた是枝裕和監督の映画『そして父になる』(2013年公開・福山雅治主演)は、まさにこの取り違えの悲劇をモチーフにした代表作です。エリート街道を歩む家庭と、下町で気さくに暮らす家庭の2組の親子が、6年間の成長のあとに取り違えの事実を告げられ、血のつながりと育んだ時間の狭間で苦悶する姿が生々しく描かれました。
また、1958年に沖縄で起きた実際の事件を綿密に取材した奥野修司氏のノンフィクション『ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の十七年』では、思春期を迎えた子どもたちが実の親と育ての親の間でアイデンティティを見失い、家庭崩壊の危機に直面しながらも新たな絆を模索する壮絶な記録が綴られています。
これらの作品群は、単なるスキャンダルではなく、「家族とは何か」「親であることの根拠はどこにあるのか」という普遍的なテーマを私たちに問いかけ続けています。