インターネットの検索空間では、「クーイング しない 発達障害 兆候」といったキーワードが不安を煽る形で流通しています。しかし、小児精神医学および小児神経学において、生後2〜3ヶ月のクーイングの有無のみで自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害をスクリーニングすることは不可能であるというのが定説です。
発達障害の評価は、生後1歳以降における「共同注意(指差しした方向を一緒に見る)」「身振り・模倣の出現」「意味のある言葉の獲得」「対人相互反応の質」などを経時的に観察して初めて慎重に行われるものです。生後数ヶ月の段階でクーイングがないことを根拠に将来の障害を予断することは、医学的根拠を欠いています。
また、生後3〜4ヶ月頃になると、それまでの穏やかな「あー」「うー」から一転して、「キーッ!」「キャーッ!」という激しい奇声や金切り声を張り上げる赤ちゃんが増加します。これに対しても「情緒不安定ではないか」「脳の異常ではないか」と驚く保護者が少なくありません。
この激しい奇声は、専門用語で「発声遊び(Vocal Play)」と呼ばれます。喉の筋肉を強く締めたり、息を勢いよく吐き出したりすることで「自分の身体からどれだけ大きな音が出るか」「高い音を出すにはどうすればよいか」を自ら実験している、極めて正常かつ健康的な発達プロセスです。赤ちゃん自身の表情が明るく、食事や睡眠に異常がなければ、声帯の発達訓練として温かく見守ることが推奨されます。