生殖医療機関で行われる精液検査において、喫煙習慣の有無は数値に顕著な差となって現れます。世界保健機関(WHO)の調査や各種臨床研究によると、喫煙者の精液は非喫煙者と比較して精子濃度が約15〜23%減少し、運動率は10%以上低下するというデータが報告されています。
タバコに含まれるニコチンには強力な血管収縮作用があり、睾丸(精巣)周辺の血流を著しく悪化させます。十分な酸素と栄養が届かなくなった精巣内では、健康な精子を育てる環境が損なわれ、結果として「数が少なく、まっすぐ泳げない精子」ばかりが作られることになります。
さらに見過ごせないのが精子の奇形率の上昇です。頭部の変形や尾部の異常を持つ精子が増加すると、卵子の外膜を突破して受精することが物理的に困難になります。男性不妊専門医が初診時に「まず禁煙を」と強く指導するのは、投薬やサプリメント以前に、タバコが精液所見を根底から狂わせる最大の外的要因だからです。