医師国家試験の合格率が毎年約90%前後で安定して推移しているのに対し、歯科医師国家試験の合格率は約63〜67%前後にまで落ち込んでいます。この極端な差を生み出している最大の要因は、厚生労働省と文部科学省が進めてきた「歯科医師の需給過剰問題に対する抑制策」にあります。
1970年代から1980年代にかけて全国で歯学部の新設が相次いだ結果、全国各地で「コンビニより多い歯科医院」と揶揄されるほどの供給過多が発生しました。将来的な医療費の増大や歯科医療の質の低下を懸念した国は、2006年の「歯科医師需給再評価」以降、国家試験の合格基準を引き上げ、年間の合格者数を約2,000人程度に制限する事実上のキャップ制を敷くようになったのです。
さらに、出題内容そのものも劇的な変化を遂げています。従来の単純な知識暗記型問題は大幅に削減され、複数の検査データや口腔内写真を読み解く「臨床実地問題」や、超高齢社会に伴う全身疾患併補(有病者歯科医療)、多職種連携を問う複合問題が主流となりました。知識量だけでなく、現場での即戦力となる論理的思考力が試されるようになったことが、近年の歯科医師国家試験の難易度推移を押し上げる決定打となっています。