なぜ、合格率9割を超える試験で不合格になってしまう人が後を絶たないのでしょうか。養成校関係者への取材や合否を分けた元受験生への聞き取りを進めると、個々の学力以前に「3つの心理的盲点」に足元をすくわれている実態が浮き彫りになります。
第1の盲点は、「みんなが受かるから自分も大丈夫」という正常性バイアスです。歯科衛生士のカリキュラムは過酷を極めます。3年制・4年制の養成校では、数ヶ月におよぶ臨床実習、日々の実習録の作成、ケースプレゼンテーションの準備に心身をすり減らします。実習が終わる秋口、多くの学生は「最大の山場を越えた」と錯覚し、無意識の気の緩みが生じます。このタイミングで国試対策へのギアチェンジが遅れた層が、そのまま直前期のパニックへと突入していきます。
第2の盲点は、「過去問の丸暗記」による思考停止です。過去問集を何周も解き、模擬試験でも見覚えのある問題で高得点を取っている受験生に多く見られます。問題文の冒頭を読んだだけで正解の記号が浮かぶ状態を「実力がついた」と勘違いし、なぜその選択肢が正解で他の選択肢が誤りなのかという周辺知識の整理を怠るのです。しかし、近年の国家試験では単純な一問一答ではなく、症例や口腔内写真と組み合わせた状況設定問題が激増しており、丸暗記では対応できない作問がなされています。
第3の盲点は、基礎医学科目(解剖学・生理学・病理学・薬理学)の致命的な取りこぼしです。臨床実習で馴染みのある歯科予防処置や歯科診療補助の分野では点数が取れても、基礎医学分野を苦手意識から後回しにし、本番で壊滅的な失点を喫するパターンが目立ちます。足切りはないとはいえ、220点満点のうち基礎科目が占めるウェイトは無視できず、ここで点数を落とした分を臨床科目でリカバーしきれずに1〜2点差で不合格となるケースが散見されます。