診察室でカルテ用語を聞いた患者がどのように受け止めているのか、ウェブ上のコミュニティやSNSの実態を調査すると、専門用語がもたらす心理的プレッシャーが浮き彫りになります。
「衛生士さんが『右上6番、C2です』と先生に伝えた瞬間、冷や汗が吹き出た」「アルファベットと数字が連続して読み上げられると、まるで自分の体が機械部品のように点検されているようで怖い」といった声は後を絶ちません。中には「斜線と言われたとき、削るための補助線をマジックで引かれたのかと思い込んで治療台の上で泣きそうになった」という20代女性の投稿も見受けられます。
一方で、現役の歯科医師や歯科衛生士に取材すると、符牒を用いる合理的な理由が存在します。東京都内の歯科クリニック院長は次のように語ります。
「患者さんの目の前で『虫歯がかなり大きくて骨まで溶けていますね』などと平易な言葉で逐一復唱すると、かえって過剰な恐怖心やショックを与えてしまいます。また、治療補助につきながら瞬時にカルテ入力を行うため、国際規格に準じた短い略号で伝達しなければミスや時間のロスが生じます。決して患者さんを蚊帳の外に置きたいわけではなく、正確性とスピードを両立するための医療安全上のルールなのです」
専門用語の背景には現場の必然性があるからこそ、患者側もその意味を正しく予習しておくことが、納得感のある受診体験につながります。