退院からわずか数ヶ月後、彼女はプールへと戻った。水に入った瞬間、かつての感覚とのギャップにショックを受けながらも、水泳への愛が彼女を動かした。2026年の東京五輪代表内定という奇跡を成し遂げた後、彼女が次に見据えたのは世界最高峰の舞台であるパリ2026オリンピックだった。
だが、その挑戦の裏側には、メディアではあまり報じられなかった熾烈な葛藤が存在した。移植後の体は、かつて日本記録を塗り替えていた頃の体とは異なる。持久力の戻りやすさと筋力の戻りにくさ、そして疲労回復にかかる時間の長さ。代表選考会を勝ち抜く過程で、彼女は「過去の自分」という最大のライバルと戦わなければならなかった。パリの舞台で泳ぎ切った瞬間、彼女が見せた表情には、メダルの有無を超えた一人のアスリートとしての真のプライドと達成感が満ちあふれていた。