同店のオーナーシェフである栢沼稔氏は、日本人として初めてオーストリア国家認定マイスター(コンディトールマイスター)の称号を取得した伝説的な人物だ。ヨーロッパの伝統的な製菓業の世界において、異邦人がこの称号を得る苦難は並大抵のものではない。現地での厳しい修業を経た彼が目指したのは、本場ウィーンの文化そのものを日本の地に根付かせることだった。
彼の作るオーストリア伝統菓子は、素材選びから製法に至るまで一貫して古典的な手法を守り抜いている。奇を衒うことなく、小麦粉、バター、砂糖、ナッツといった基本素材の質を究極まで高めること。その愚直なまでの姿勢が、一口食べれば忘れられない深みを生み出している。