赤坂の起伏に富んだ地形を活かした境内に立つと、まず目を奪われるのが黒塗りの落ち着いた佇まいを見せる社殿だ。この壮麗な建物は、享保15年(1730年)、江戸幕府第8代将軍の徳川吉宗の命によって建立された。以来、大火や関東大震災、東京大空襲という幾多の戦災・天災をことごとく免れ、当時の姿のまま現存している。
奇跡の生存。社殿に刻まれた細やかな彫刻や古色を帯びた柱の風合いは、東京都神社庁が指定する有形文化財としての学術的価値にとどまらず、訪れる者に目に見えない守護の力を直感させる。コンクリートジャングルに囲まれた赤坂で、約300年ものあいだ災厄を跳ね除け続けてきた空間そのものが、無言の説得力を持って参拝者を迎えてくれる。