「月額300円程度なら安いものだ」と安易に判断するのは早計かもしれない。持ち運び制度を利用するにあたっては、解約前に把握しておくべき予期せぬリスクと仕様上の制約が存在する。
第一に、決済手段の制約だ。回線契約を解除しているため、旧キャリアの「合算支払い(キャリア決済)」でメール維持費を払うことはできない。本人名義のクレジットカード登録が必須となるケースが大半であり、カードを保有していない場合は継続自体が困難になる。
第二に、認証機能の制限である。金融機関や一部の厳格なWebサービスでは、キャリアメールを二段階認証の送信先に指定する際、回線認証を伴う場合がある。持ち運び化されたメールアドレスは回線契約から切り離された単体のメールサービスとして機能するため、一部の高度なキャリア認証が弾かれる事例が報告されている。
第三に、迷惑メールフィルターの再設定だ。乗り換えに伴ってセキュリティ設定が初期化されたり、指定受信リストが白紙に戻ったりすることがある。大切な通知がスパムフォルダに振り分けられる事例も珍しくない。
第四に、ランニングコストの蓄積だ。1アドレスあたり月額330円、年間で約4,000円。家族数人分を数年間保持し続ければ、決して無視できない出費となる。
第五に、Wi-Fi環境下での初期設定の煩雑さだ。従来のプロファイル設定とは異なり、新キャリアの端末に手動でIMAP/SMTP設定を流し込む作業が必要になる場合がある。ITリテラシーに不安がある層にとっては、少なからずハードルが高い作業だ。