公開当時、最も衝撃を与えたのが、主人公である4歳の男の子「くんちゃん」を、当時18歳だった上白石萌歌が演じたことだ。大人の女性が幼い男の子を演じること自体は珍しくない。だが、上白石が表現したのは、いわゆる「アニメ的な可愛い男の子の声」ではなかった。
そこにあったのは、駄々をこね、泣き叫び、感情をコントロールできないリアルな「4歳児の生態」そのものだ。
2026年現在、ドラマや舞台で圧倒的な存在感を放つ女優へと成長した上白石。彼女の原点とも言えるこの役を今見返すと、その生々しい感情の揺れ動きに驚かされる。洗練されていない、剥き出しの幼児の声をあえて選んだ細田監督の慧眼と、それに見事に応えた上白石の表現力。それは、記号化されたキャラクターに命を吹き込むための、必然の選択だったのだ。