ドラマ『エール』のあらすじと実際の歴史を照らし合わせると、いくつかの興味深い相違点が存在します。視聴者を惹きつけるドラマならではの演出と、記録に残る史実の対比を整理します。
まず大きな違いとして挙げられるのが、国際作曲コンクールへの応募と入選の経緯です。ドラマではイギリスの「チェスター・コンクール」で2等に入賞したことが大々的に描かれました。史実でも古関裕而は1929年、イギリスロンドンのチェスター楽譜出版社主催の国際作曲コンクールに舞踊組曲『竹取物語』などを応募し、日本人として初めて上位入選を果たしています。ただし、ドラマのようにすぐに華々しい道が開けたわけではなく、当時の世界恐慌や家庭の事情でイギリス留学自体は断念せざるを得ませんでした。
また、妻・金子との文通とスピード結婚の過程も、実話はドラマ以上に情熱的です。雑誌で古関の入選を知った愛知県豊橋市の声楽志望の少女・内山金子がファンレターを送ったことから文通がスタート。わずか数か月の間に100通を超える熱烈な手紙を交わし、一度も直接会わないまま婚約に至るという、当時としては破格の純愛を貫きました。
さらに、作中で描かれた周囲のキャラクター設定(幼馴染の村野鉄男や佐藤久志)は、実在の作詞家・野村俊夫や声楽家・伊藤久男をモデルにしながらも、物語の進行に合わせて人間関係の濃淡がドラマオリジナルとして再構成されています。戦争期のインパール作戦従軍やビルマ戦線での過酷な体験は史実に基づきつつも、主人公の内面描写には現代的な平和へのメッセージが色濃く反映されました。