『春よ、来い』は、NHK(日本放送協会)が放送開始70周年記念作品として威信をかけて制作した長編ホームドラマである。一般的な連続テレビ小説の枠組みを超えた全2部構成・通年放送という異例のスケールで立ち上げられた。脚本を担当した橋田壽賀子は、主人公・高倉春希の姿に自身の生い立ちを克明に重ね合わせている。
戦前の裕福な少女時代から一転、終戦の混乱と困窮、松竹映画に入社しながらも女性であるがゆえに味わった激しい挫折。そしてテレビドラマという新たなフロンティアへの挑戦——。劇中で描かれる春希の苦闘は、日本の放送業界そのものの夜明けと重なり合う。妥協を許さない橋田特有の長セリフが、登場人物たちの血肉となって画面越しに熱を放ち、視聴者を惹きつけた。