多くの人々が驚きをもって受け止めたのが、最難関である東京藝術大学をわずか1年足らずで中退したという事実です。ネット上では「規律に合わずにクビになったのではないか」「挫折したのではないか」といった憶測が散見されますが、実情は全く異なります。
音楽誌やドキュメンタリー番組の密着取材において、常田本人は中退を決断した当時の心境を一貫して次のように語っています。「伝統を守り継ぐクラシックの世界への敬意はあるが、自分は今、同時代を生きる街の若者たちに直接届く音楽、社会を揺るがすポップスを作りたい」という強烈な初期衝動です。大学という閉ざされたアカデミズムの中で椅子に座り続けることよりも、混沌としたストリートの現場へ身を投じることを優先した、前向きな「脱出」であったと言えます。
彼が音楽シーンにおいて「天才」と称される理由は、単なるメロディセンスの良さに留まりません。以下の3つの要素が奇跡的なバランスで融合している点にあります:
- 高度な音楽理論とアンサンブル構築力:クラシックや現代音楽の緻密なオーケストレーションをポピュラー音楽に落とし込む構成力。
- ジャンルを解体するサンプリング美学:ヒップホップやジャズ、グランジロックの粗削りな質感をそのまま生かすプロデュース手腕。
- 巨大なヴィジュアル構想力:音楽単体ではなく、映像、アートワーク、ファッションまでを一貫した世界観で包括するクリエイティブ統率力。
King Gnuの代表曲である「白日」や「SPECIALZ」で見せた、一聴して大衆の耳を掴みながらも、コード進行や転調の随所に高度な技法が張り巡らされている構造こそが、彼のアカデミックな素養と大衆性の幸福な結晶と言えるでしょう。