米国主導で進められたヒトマイクロバイオーム計画 (Human Microbiome Project) 以降、ビフィズス菌がもたらす全身への作用機序が次々と解明されている。腸内で生成される短鎖脂肪酸 (Short-Chain Fatty Acids) は、単なる排便促進物質ではない。腸粘膜のタイトジャンクション(細胞間結合)を強固にして病原菌や未消化物の血中流入を防ぐ「腸漏れ(リーキーガット)」のバリア機能を飛躍的に高める。
さらに、短鎖脂肪酸は腸管の内分泌細胞に作用してGLP-1やPYYといった食欲抑制・血糖コントロールホルモンの分泌を促し、肥満や糖尿病の予防に寄与する。過剰な免疫応答を鎮静化させる制御性T細胞(Treg)の分化を促進することで、花粉症をはじめとするアレルギー症状の緩和にも関与することが実証された。脳と腸が神経系を通じて双方向に影響し合う「脳腸相関」を介し、不安の軽減や睡眠の質の改善にまで寄与するというデータは、世界中のメンタルヘルス研究者をも驚愕させている。