側頭部の痛みを訴える人の中で、「押すと痛いが、それ以上に表面の皮膚を軽く触るだけでピリピリ・チクチクする」という訴えが少なからず見受けられます。これを単なる偏頭痛と勘違いし、市販の解熱鎮痛薬(ロキソプロフェンやイブプロフェンなど)を頻繁に服用し続けるケースがありますが、これは明らかな落とし穴です。
皮膚表面が刺すように痛む現象は、筋肉のコリではなく「耳介側頭神経痛」や「大後頭神経痛」による神経障害性疼痛の疑いがあります。神経が過敏状態に陥ると、通常では痛みとして認識されない「髪をかき上げる刺激」や「ブラシが当たる刺激」を激痛として錯覚する「アロディニア(異痛症)」が発生します。この状態に対して一般的な非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はほとんど効果を発揮せず、漫然と飲み続けることで薬物乱用頭痛(MOH)という別の難治性頭痛を誘発する悪循環に陥ってしまいます。
さらに注意が必要なのが、帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ウイルス)の初期症状です。皮膚に赤い発疹や水ぶくれが現れる数日から1週間ほど前から、三叉神経の支配領域に沿って「片側だけのピリピリとした激痛」「押したときの強い圧痛」が生じます。発疹が出てから72時間以内に抗ウイルス薬を投与しなければ、長期にわたって激痛が残る「帯状疱疹後神経痛」へ移行するリスクが高まるため、皮膚表面のピリピリ感を覚えた際は鏡で発赤がないかを毎朝確認することが重要です。