名実ともに大スターとなった渡兄弟だが、驚くべきことに生涯を通じてメディアでの共演機会は極めて少なかった。「安易な話題作りで兄弟共演はしない」という暗黙のルールを徹底して守り抜いていたからだ。そんな二人が奇跡的に同じフレームに収まったNHK大河ドラマ『勝海舟』やドラマ『十津川警部シリーズ』での共演は、映画・ドラマファンの間で語り草となっている。
撮影現場での二人は、徹底して共演俳優としての節度を保ち、私生活の兄弟の顔を見せることは決してなかったという。しかし、カメラが回っていない控室では、互いの体調を気遣い、芝居に対する熱い議論を交わす姿がスタッフによって目撃されている。
近年、当時の関係者が明かしたエピソードによれば、渡哲也が大病を患った際、渡瀬恒彦は自身の撮影スケジュールを縫って足繁く病院へ通い、誰よりも兄の回復を祈り続けていたという。逆に渡瀬が病に倒れた際には、渡哲也が周囲に「恒彦のことは私が守る」と語り、深い愛情を注いでいた。公の場で見せる寡黙なストイシズムの裏には、誰にも邪魔できない血の結束が存在していた。