アニメ本編のダークで難解な世界観と見事に合致している『残酷な天使のテーゼ』ですが、及川氏自身が設定した歌詞の根本的な視点は、実は「年上の女性(母親)から見た14歳の少年」でした。
主人公・碇シンジをはじめとする登場人物たちが抱えるトラウマや、母親の存在を巡る葛藤は作品の根幹を成すテーマです。及川氏は作品の詳細を知らないまま、「これから過酷な運命へと旅立っていく少年を、包み込むような眼差しで見送る母性」をコンセプトに据えました。
「少年よ 神話になれ」「窓辺からやがて飛び立つ」という象徴的なフレーズは、心理学における「母子分離」と「青年の精神的自立」のプロセスそのものを描いています。残酷な天使とは、少年を過酷な現実へと誘い出す運命そのものであり、同時に少年の無垢な魂を指しているとも解釈できます。作品固有の固有名詞を一切使わず、人間の根源的な成長痛と神話的な叙事詩を融合させたからこそ、作品のファン層を超えて広く心に刺さる普遍性を獲得しました。