ティアラを新調されない一方で、成年式や新年祝賀の儀などの重要儀礼においてローブデコルテにティアラを合わせるドレスコードは厳格に定められています。そこで浮上したのが、天皇陛下の妹である黒田清子さん(紀宮さま)のティアラを借用するという前代未聞の選択肢でした。
ここで重要な法的論点となるのが、皇族方の装飾品に関する財産区分です。通常、宮廷費(国の公費)で制作されたティアラは「国有財産」として宮内庁が管理します。そのため、女性皇族がご結婚によって皇籍を離脱される際には、ティアラを国に返納しなければなりません。実際に、小室眞子さんや秋篠宮家の次女・佳子さまのティアラは公費で作られているため国有財産です。
対して、黒田清子さんのティアラは、1989年の成年時に当時の天皇皇后両陛下(現在の上皇ご夫妻)が日常の生活費にあたる私費(内廷費)から約2,000万円を拠出して制作されたものでした。公費ではなく私費負担で作られた宝飾品であったため、清子さんが2005年にご結婚されて皇籍を離脱された後も国の管轄とならず、清子さん個人の私有財産として手元に残されていたのです。
愛子さまにとって清子さんは父方の叔母にあたり、幼少期から深い信頼関係で結ばれていました。「国民生活が大変な時期に公費を使わず、叔母の私有物をお借りする」という解決策は、皇室経済法の枠組みを遵守しつつ、国民感情にも最大限配慮した見事な知恵でした。叔母から姪へと受け継がれた輝きは、血縁の温かさと品格を帯びた象徴として、多くの人々に感銘を与えました。