近年、ブラジル産鶏肉を取り巻く情勢で最も大きなインパクトを与えたのが、高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生に伴う一時的な輸入停止措置です。
かつてブラジルは「世界で唯一、商業養鶏で鳥インフルエンザが発生していない奇跡の清浄国」と呼ばれていました。しかし、地球規模での野生渡り鳥の感染拡大に伴い、ブラジル沿岸部でも野鳥の感染が確認され、一部の州で裏庭飼育や商業用家禽施設への疑いが生じた際、日本政府は即座に該当州からの輸入を一時停止する緊急予防措置を発令しました。これにより、一時は「鶏肉ショック」「ファミチキや唐揚げが店頭から消えるのではないか」と食品業界に激震が走った経緯があります。
この局面を乗り越える契機となったのが、「地域主義(ゾーニング)」の合意運用です。日本とブラジルの検疫当局間で協議が重ねられ、広大なブラジル全土を一括して輸入停止にするのではなく、「清浄性が確認されている州や地域からの輸出は継続する」というルールが明確化されました。
2026年現在の最新流通状況に目を向けると、日本の鶏肉総消費量のうち、輸入鶏肉は依然として全体の約3割を占め、その輸入量の7割以上をブラジル産が独占しています。長引く円安や世界的な飼育資材の高騰によって、以前のような「100グラム30円台」という極端な底値は見られなくなったものの、依然として国産肉との価格差は盤石です。国内の供給網は完全に再編・安定化しており、日本の食生活を支える不可欠な基幹タンパク源として流通し続けています。