この演出が半世紀以上にわたって廃れず、テレビや漫画の定番として定着し続けた最大の理由は、「性的な生々しさを無害化するフィルター効果」にあります。
女性の肉体描写は、一歩間違えると生々しいエロティシズムとなり、地上波の放送コードや少年誌の掲載基準に抵触するリスクを孕んでいます。しかし、そこに「ボヨヨン」という極端にマヌケで非現実的な音とデフォルメを加えることで、視聴者の視点は「性的興奮」から「笑い」へと巧みに誘導されます。
志村けん氏のコントや昭和のバラエティ番組でお色気演出が国民的人気を得ていたのも、この脱力感あふれる音響演出によってお茶の間に気まずさを残さない配慮がなされていたためです。表現規制を回避しつつ大衆の娯楽精神を満たすための、極めて実用的な知恵だったといえます。