波佐見焼と聞けば、多くの人が日常使いのシンプルで洗練されたうつわを思い浮かべるはずだ。だが、そのルーツを深く辿ると、江戸時代の「くらわんか碗」や「コンプラ瓶」にまで行き着く。庶民の食卓を支え、はるか海外へ出荷された歴史。その大爆発的な生産能力の秘密が、まさにここ中尾山にあった。
かつて全長約160メートルにおよぶ世界最大級の登窯「大新登窯」が築かれたこの地には、現在も赤レンガの煙突がいくつも残り、集落全体がひとつの立体的な博物館のような佇まいを見せている。時代とともに燃料は薪からガスや電気へと変わったが、路地裏に漂う職人たちの気配と熱気は変わらない。静けさの中に、確かな手仕事の鼓動が脈打っている。