店内の大型生簀を覗くと、透き通るような透明感をもったヤリイカや剣先イカが優雅に泳いでいる。ここでの主役は間違いなく「イカの活造り」だ。注文が入った直後、職人が網ですくい上げ、包丁を入れて皿に盛るまでの時間はわずか数分。テーブルに運ばれてきた瞬間、足がまだピクピクと動き、身はまるで水晶のように輝いている。
「鮮度の差は、秒単位の包丁仕事で決まります」と話すのは、長年同店を率いる総料理長だ。自ら毎朝市場や漁港とのネットワークを駆使し、独自のルートで厳選された産地直送鮮魚だけを仕入れている。捌きたてのイカを口に運ぶと、甘みと歯ごたえが同時に押し寄せ、噛むほどに深い旨味が口いっぱいに広がる。後造りとして提供される天ぷらや塩焼きの香ばしさも、常連客をトリコにして離さない理由だ。