見る者を圧倒する純白の毛並みを持つ犬たちは、単一の品種ではない。寒冷地での過酷な労働や外敵からの家畜防衛を目的に固定化された、固有の歴史を持つスペシャリスト集団である。現在、日本国内および世界で「シロクマのような風貌」として絶大な支持を集める代表的な7犬種を詳解する。
筆頭に挙げられるのが、シベリア原産のワーキングドッグであるサモエドだ。極寒のツンドラ地帯でトナカイの放牧やソリ引きに従事してきた歴史を持ち、分厚い純白のダブルコートと「サモエド・スマイル」と呼ばれる口角の上がった表情が特徴である。体重は20〜30キログラム前後の中・大型サイズながら、豊かな毛量によって実サイズ以上の圧倒的なボリューム感を放つ。
さらなる巨躯を誇るのが、フランスとスペインの国境地帯で生まれたグレート・ピレニーズである。成犬の体重が50〜60キログラムを超える個体も珍しくない超大型犬であり、かつてはピレネー山脈で狼や熊から羊の群れを守る警備犬として君臨した。太く頑強な骨格、豊かな飾り毛、そして何者にも動じない威厳に満ちた佇まいは、まさに地上を歩くシロクマそのものである。
イタリア中部のアブルッツォ地方を起源とするマレンマ・シープドッグも、白き巨犬の代表格だ。オオカミの襲撃から羊を守るため、家畜の群れと同化する白い毛色へと淘汰された背景を持つ。独立心が極めて強く、警戒心と防衛本能に長けた使役犬の血統を色濃く残している。
ハンガリー原産のクバースは、中世の王侯貴族に護衛犬として重用された高貴な血脈を持つ。わずかにウェーブがかった厚い白毛と引き締まった筋肉質なボディが特徴で、不審者に対しては極めて勇敢に対峙する冷徹な防衛能力を備えている。
警察犬や災害救助犬としても知能の高さを示すのが、ホワイト・スイス・シェパード・ドッグだ。ジャーマン・シェパードの遺伝子から派生した美しい純白種であり、立ち耳と均整の取れたアスリート体型が、雪原を駆けるホッキョクオオカミのような凛々しさを醸し出す。
日本の住環境に即した「手のひらサイズのシロクマ」として不動のポジションを保つのが日本スピッツである。昭和期の大ブームを経て気質の穏和化が進められた本種は、体重10キログラム未満のコンパクトボディに、真っ白なスタンドコートと黒く澄んだ瞳を宿す愛玩犬の傑作といえる。
最後に、中国原産のチャウチャウのホワイト個体も見逃せない。独特の青黒い舌、がっしりとした短いマズル、そして首周りに広がるライオンのような豊かな被毛が、ずんぐりとした愛嬌ある子グマのシルエットを体現している。