インターネット上の健康情報には、根拠の乏しい民間療法や過度の期待を抱かせる市販薬の宣伝が溢れており、事態を悪化させる落とし穴となっています。メディアやネット上で流布する代表的な3つの誤解を正しく解体していきましょう。
誤解1:市販の漢方薬や蓄膿症薬を飲めば自力で完治できる?
ドラッグストアで広く販売されている「排膿散及湯」や「辛夷清肺湯(チクナイン等)」などの市販漢方製剤は、初期の急性副鼻腔炎における鼻粘膜の浮腫を和らげ、排膿を後押しする一定の有用性を持っています。しかし、これらはあくまで補助的な対症療法です。すでに副鼻腔内に貯留した粘度の高い膿汁の塊、真菌(カビ)塊、物理的に気道を塞ぐ鼻茸、あるいは歯根由来の細菌感染に対しては、市販の内服薬だけで根治させることは医学的に不可能です。効果を過信して数週間から数ヶ月も市販薬に頼り続けると、急性だった炎症が慢性化(3ヶ月以上持続)へ移行し、最終的に内視鏡下副鼻腔手術を余儀なくされるリスクを高めます。
誤解2:水道水で鼻を強く洗えば菌を洗い流せる?
「臭い膿を洗い出したい」と焦るあまり、洗面台で水道水を直接鼻から吸い込んで洗浄しようとする行為は極めて危険です。水道水は体液と浸透圧が異なるため、鼻粘膜の上皮細胞を激しく刺激して浸透圧性浮腫を引き起こし、かえって鼻づまりや痛みを悪化させます。さらに、水道水中にごく稀に含まれる微生物や雑菌が、傷ついた粘膜から侵入して二次感染を引き起こす危険性も否定できません。鼻洗浄を行う際は、必ず体液と同じ浸透圧に調整された0.9%生理食塩水を人肌(36〜38℃程度)に温めて使用することが鉄則です。
誤解3:自分が感じる悪臭は他人も絶対に感じている?
鼻の中に強烈な臭いを感じているとき、客観的な診察を受けると「周囲には全く悪臭が漏れていない」ケースが少なくありません。これには2つの側面があります。ひとつは、膿が鼻腔奥深くに留まり、呼気として口や鼻の外へ拡散する濃度が極めて薄い生理的現象です。もうひとつは、精神的なストレスや過度の不安から「自分は周囲を不快にする悪臭を放っている」と強く信じ込んでしまう自臭症(嗅覚参照症候群)です。鼻粘膜に器質的な異常がないにもかかわらず悪臭の恐怖に苛まれている場合、耳鼻咽喉科での内視鏡・CT検査によって客観的な無病状態を確認することが、心の平安を取り戻す第一歩となります。