1965年の来日以来、添加物を使わない本物のフランス伝統パンを日本に普及させたフィリップ・ビゴ氏。1972年にオープンしたビゴの店 芦屋本店は、日本のフランスパン発祥の聖地として知られています。オーセンティックな職人技にこだわり抜いた功績により、フランス政府からレジオン・ドヌール勲章を受章するなど、まさに「フランスパンの神様」として日仏の食文化の架け橋となりました。
ビゴ氏が遺した最大の教えは、「パンは命の糧であり、生き物である」という哲学です。小麦粉、水、イースト、塩という極めてシンプルな原料のみを用い、日々の気温や湿度を指先の感覚で見極めながら発酵を管理する製法は、現在も熟練のベーカーたちへ脈々と受け継がれています。現代の大量生産型ベーカリーとは一線を画す、クラスト(皮)の芳醇な香ばしさとクラム(中身)のみずみずしい気泡の弾力は、この厳格な基本姿勢から生み出されています。