時代劇の常識を根底から覆したのが、朝日放送テレビとテレビ朝日のタッグによって世に放たれた『必殺仕事人』だった。従来の正義漢とは対極に位置する、うだつの上がらない同心・中村主水。この前代未聞のキャラクター像を完璧に造形したのが藤田まことだ。家庭では婿養子として肩身の狭い思いをし、奉行所では怠け者として扱われる男が、夜になれば白刃を閃かせて悪を討つ。その二面性に当時の視聴者は熱狂した。
藤田が現場で見せたプロフェッショナリズムは伝説的だ。単に格好良い立ち回りを演じるのではなく、人を斬る業の深さや哀愁を背中で語る。三味線屋の勇次を演じた中条きよしや、飾り職人の秀を演じた三田村邦彦ら個性豊かな面々とのアンサンブルは、今なおテレビドラマ史における最高峰のチームワークとして語り継がれている。