世界最高峰の舞台であるACミランへ移籍した当時、日本中がその一挙一動に注目していた。しかし、サン・シーロのピッチで見せるプレイに時折見られたキレの欠如や眼球の突出、急激な体重変化は、ファンの間で不安を呼んだ。スポーツ医学の観点から見れば、甲状腺機能亢進症は代謝が異常に高まり、心拍数の上昇や筋力低下を引き起こす病気である。常人であれば日常生活すら困難になり得るコンディションの中で、プロサッカーの世界でトップパフォーマンスを維持しようとしたこと自体が驚異的であった。
当時のイタリア大手スポーツ紙や地元メディアも、彼の肉体的な異変を注視していた。だが本田は、プレッシャーや批評に晒されながらも、クラブの背番号10としての誇りを胸にピッチに立ち続けた。病の影に怯えることなく、目の前のボールと向き合い続けた姿勢は、彼のキャリアにおける最も過酷で、最も気高い章の一つとして記録されている。