バカンティマウスの実験から約30年が経過した現在、耳の再生医療はどこまで進化を遂げているのでしょうか。
現代の医療現場において、もはや動物の背中で軟骨を育てる必要はありません。組織工学と3Dプリンティング技術の融合により、患者自身の生体外で安全に耳の軟骨を造形・培養する手法が実用化されています。
すでに中国やアメリカをはじめとする最先端の医療チームは、小耳症患者の健康な側の耳を3Dスキャンして正確な形状データを取得し、生体適合性材料を用いた3Dバイオプリンターで足場を出力。患者自身の軟骨細胞を付着させて体外で培養し、そのまま移植手術を行う臨床研究を成功させています。
拒絶反応のリスクがない患者本人の細胞を使い、他者の軟骨や動物を介さずにオーダーメイドの耳を再建する技術は、実用化のフェーズを迎えています。かつて「おどろおどろしい実験写真」として騒がれたバカンティマウスの基礎研究は、形を変えて多くの患者のQOL(生活の質)を支える本物の医療技術へと結実しています。