気温の劇的な違いは、そこに根付く生態系にも極めて鮮明なコントラストを生み出している。よくある童話やイラストではホッキョクグマとペンギンが同じ氷の上に描かれることがあるが、現実にはホッキョクグマとペンギンの生息環境は地球の両端に完全に分かれている。
北極圏の王威を誇るホッキョクグマは、ユーラシアや北米大陸の陸地と北極海の海氷と海流を行き来しながらアザラシを捕食する。北極にはツンドラ地帯が存在し、夏にはコケ植物や花が咲き、トナカイやホッキョクギツネ、野鳥など多様な陸上哺乳類が生息できる環境が保たれている。これは海からの温熱供給によって極端な冷却が抑えられている恩恵である。
対して南極大陸の内陸部は、草木が一切生えない「氷の砂漠」である。過酷な寒冷と乾燥のため、自立した陸上哺乳類は1種も存在しない。皇帝ペンギンやアデリーペンギンなどの海洋生物は、比較的寒さが緩む沿岸部の海氷や露岩帯にのみ生息し、豊富なプランクトンを育む南極海に命の糧を依存している。
南極観測隊員の手記や現地報告によると、内陸基地での越冬生活は「吐いた息が瞬間的に凍り、カサカサと音を立てて落ちる」「露出した皮膚が数分で凍傷に陥る」という極限状態である。金属器具に素手で触れれば皮膚が凍結して張り付くなど、北極圏の集落や観測拠点とは比較にならない危険と隣り合わせの環境が広がっている。