急な背中の激痛に見舞われた際、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが「ぎっくり背中」という通称です。しかし、医学的な見地からぎっくり背中と骨由来の背骨痛を混同することは極めて危険です。リハビリテーション専門企業「リハサク」の臨床報告でも示されている通り、痛みが現れる「範囲」と「深さ」の峻別が鑑別の絶対条件となります。
ぎっくり背中は、主に脊柱起立筋や僧帽筋、菱形筋といった背面の筋肉や筋膜の急性断裂・痙攣(けいれん)です。そのため、痛みの範囲は手のひら大から帯状に広がり、筋肉が引きつるような張り感を伴います。一方、棘突起炎や圧迫骨折は「骨」そのものの局所障害であるため、痛みの局在は指先で示せるほど極めてピンポイントです。
特にアスリートや激しいスポーツ愛好家、あるいは肉体労働に従事する人に頻発するのが「棘突起炎」と「棘突起骨折」です。棘突起骨折は、かつて重労働者がシャベルで土を跳ね上げる動作で多発したことから「クレイ・ショベラー骨折(Clay-shoveler's fracture)」とも呼ばれ、第7頸椎や第1胸椎の棘突起が、僧帽筋や菱形筋の強力な筋収縮による牽引力で引きちぎられるように骨折する現象を指します。また、シートベルトの強い圧迫や転倒時の打撲など、骨の出っ張りに直接衝撃が加わることでも発生します。
ここで注意しなければならないのは、インターネット上の口コミや一部の民間療法で散見される「背骨がズレているからボキボキ鳴らして矯正すれば治る」という言説の誤りです。石神井さくら鍼灸整体院のような良心的な施術所でも「安易に背骨をいじる前に整形外科での画像診断を最優先すべき」と注意喚起している通り、もし骨折や炎症、骨粗しょう症が存在する状態で外力を加えて回旋・圧迫するような矯正施術を受ければ、骨折部がさらに押し潰されて脊髄神経を損傷し、下半身麻痺などの取り返しのつかない後遺障害を招くリスクすらあります。