映画『Dear Friends』で北川景子が演じたのは、誰もが羨む美貌を持ちながら、心に深い孤独と冷徹さを抱える女子高生・リナです。「友達なんて必要な時だけ利用するもの」と言い放ち、夜のクラブで刹那的な快楽を貪っていたリナを、ある日突然の悲劇が襲います。
学校で突然倒れたリナに下された診断は、過酷を極めるものでした。激しい胸の痛みの原因は乳がん(悪性腫瘍)であり、命を繋ぐためには右胸の全摘出手術が避けられないという現実を突きつけられます。美と若さだけを誇りにして生きてきた彼女にとって、胸を失うことは自らのアイデンティティの完全な崩壊を意味していました。
手術後、自暴自棄となり周囲に当たり散らすリナのもとから、それまで群がっていた「クラブ仲間」たちは潮が引くように去っていきます。完全な孤立と絶望の中、病室の窓から身を投げようとするリナを間一髪で引き止めたのが、小学校時代の同級生・マキ(本仮屋ユイカ)でした。
過去にリナから冷酷ないじめや無視を受けていたにもかかわらず、マキは毎日病院に通い詰め、献身的にリナの心を開こうと寄り添い続けます。「なぜ私に関わるの?」と罵倒するリナに対し、マキは自分の胸にナイフを当て、「リナの痛みを半分もらう」と叫び自らを傷つけてみせます。他者を信じられなかったリナの凍りついた心が、マキの無償の愛によって激しく溶かされていく名シーンです。
しかし、物語は単なる美談では終わりません。過酷な運命の皮肉として、マキ自身も幼少期から重い心臓病を患っており、余命幾ばくもない状態でした。マキは自分の残された時間をすべてリナに捧げ、リナに「生きる意志」を取り戻させた直後、力尽きるように心臓発作で息を引き取ります。
最愛の友を失ったリナは号泣しながらも、マキが遺してくれた温もりを胸に闘病を続け、見事に寛解を迎えます。そして数年後、映画の結末でリナは小児病棟の看護師となり、かつての自分のように病気に苦しむ子どもたちを優しい笑顔で励ます姿が描かれます。絶望の底から再生を果たしたリナの瞳には、かつての冷笑ではなく、真の強さと慈愛が宿っていました。