せっかく形を整えたベーグルが茹で工程やオーブン内で崩壊してしまう現象には、明確な物理的・化学的理由が存在します。主な原因は以下の5点に集約されます。
第1に、生地の乾燥対策不足です。分割後のベンチタイムや棒状に伸ばす工程で生地表面が空気に晒されてカサつくと、生地同士が融合するための粘着力を失います。表面が乾いた状態でいくら上から指でつまんでも、グルテン組織同士が再結合せず、単に「仮止め」されただけの状態になってしまいます。
第2に、打ち粉の巻き込みです。成形時に作業台や手に打ち粉(強力粉など)を過剰につけると、生地の接着面に粉の層が形成されます。これが強固なバリアとなり、生地同士の密着を完全に阻害してしまいます。
第3に、手作りベーグル成形における棒状の巻きの甘さです。平らに伸ばした生地を筒状に巻く際、芯に空洞が残っていたり締め付けが緩かったりすると、内部から不均一なガス圧がかかり、最も脆弱なつなぎ目に負荷が集中して破裂を引き起こします。
第4に、ケトリングお湯の温度と対流の激しさです。グツグツと大きな泡が立つ沸騰状態(100℃)の鍋に生地を投入すると、激しい水流と気泡の衝撃がつなぎ目を物理的に引き剥がします。
第5に、発酵見極めととじ目の状態のミスマッチです。発酵不足のまま茹でて焼成すると、オーブン内で急激な熱膨張(オーブンスプリング)が起き、生地の伸展性が追いつかずにつなぎ目から裂けてしまいます。逆に過発酵の場合は、グルテン骨格が弱まり、ケトリングのお湯の重みに耐えられずに接着面が崩壊します。