この2作品がここまで混同される背景には、単なる個人の記憶違いにとどまらない、当時の社会現象とメディアミックスの仕掛けが存在します。
1. 1970年代「角川映画ブーム」と映画公開の連続性
1976年に角川春樹事務所の第1作として製作された映画『犬神家の一族』(市川崑監督・石坂浩二主演)は、空前のメガヒットを記録しました。その直後の1977年、松竹が総力を挙げて映画化したのが『八つ墓村』(野村芳太郎監督)です。わずか1年の間に同じ原作者のおどろおどろしいミステリ大作が相次いで社会現象となったため、当時の熱狂がひとまとめにアーカイブされていきました。
2. 流行語「祟りじゃ〜っ!」のパロディ定着
映画『八つ墓村』のテレビCMで、名女優・春川ますみ演じる濃茶の尼が叫んだ「祟りじゃ〜っ! 八つ墓の祟りじゃ〜っ!」というフレーズは、日本全国を席巻する大流行語となりました。後年のバラエティ番組では、この「祟りじゃ〜!」のセリフとともに犬神家の「スケキヨマスク」を被って登場するパロディコントが量産された結果、2つの要素が不可分に結びついてしまったのです。
3. 「旧家の因習」「おどろおどろしい村」という共通の世界観
閉ざされた地方都市や寒村、家督争い、血縁の呪い、連続猟奇殺人、そしてボサボサ頭にお釜帽子の名探偵・金田一耕助の介在など、作品を構成するトーン&マナーが極めて酷似していることも、記憶の混同に拍車をかけています。