マーガリンは決して「バターの安易な模倣品」として生まれたわけではない。その起源は19世紀のフランス、激動の軍事・社会情勢にさかのぼる。
普仏戦争を控えた1869年、ナポレオン3世は海軍や貧民層のために、高価なバターに代わる安価で保存性に優れた代用油脂の懸賞公募を行った。この国家プロジェクトに応じ、画期的な発明を成し遂げたのが化学者イポリット・メージュ=ムーリエである。
彼は牛脂を酵素処理し、牛乳とともに攪拌して冷やし固めることで、真珠(ギリシャ語でマルガリテス)のような光沢を持つ油脂スプレッドを生み出した。これがマーガリンの夜明けだ。軍用糧食から始まった発明は、20世紀の技術改良を経て植物油中心の配合へと進化し、世界中の台所を支える一大産業へと成長を遂げた。