大会開幕直前の2026年6月27日、日本バスケットボール界に激震が走りました。NBAロサンゼルス・レイカーズで主力としてカンファレンスファイナル進出に貢献した八村塁選手が、ワールドカップへの不出場を正式表明したのです。
当時、ネット上や一部週刊誌では「代表軽視ではないか」「指揮官との確執があるのでは」といった根拠のない憶測が飛び交いました。しかし、公式発表資料および米現地メディアの契約動向を検証すると、辞退の理由は極めて合理的かつプロフェッショナルな判断によるものでした。
当時、八村選手は制限付きフリーエージェント(RFA)の身であり、自身の今後のプロキャリアを決定づける大型契約交渉の真っただ中にありました。結果としてレイカーズと3年総額5,100万ドル(約73億円)という破格の契約を勝ち取ったわけですが、この時期に無理をして怪我を負うリスクは、代理人や所属球団の観点からも絶対に回避すべき事態でした。自著や特番インタビューでも八村選手本人が語っている通り、「今後の長いキャリアを見据え、コンディションを完璧に整えるための苦渋の決断」だったのです。
そして特筆すべきは、八村選手の不在が日本代表チームに逆説的な「結束」と「戦術の純化」をもたらした点です。圧倒的な個の能力を持つ八村選手がいる場合、どうしても彼のアソレーション(1対1)やミドルレンジシュートに依存しがちになります。しかし、大黒柱が不在となったことで、ホーバスHCの掲げる「全員が走り、全員が3ポイントを狙う」というシステムに迷いが消え、メンバー全員が自立した当事者意識を持つ契機となりました。