このカルチャーを語る上で見落としてはならないのが、日本が誇る二輪自動車製造・アフターマーケット産業の現場である。旧車のマフラー、外装パーツ、シート、キャブレターのオーバーホールを手がける町工場の職人たち。彼らの卓越した技術力なくして、半世紀近く前のバイクが現代の路上を疾走することはあり得ない。
職人たちの胸中は複雑だ。自分たちが魂を込めて叩き出した板金や手曲げのマフラーが、日本のカスタムバイク文化を世界最高峰のレベルに引き上げているという強烈な自負がある。一方で、その製品が「違法改造」や「迷惑な騒音走行」の道具として指弾される現実に、深い葛藤を抱え続けている。
あるマフラー職人は吐露する。「音の抜けとトルクを突き詰めれば、結果として美しい音が出る。だが、それをどう鳴らすかは乗り手のモラルだ」。産業としての経済効果と、社会的責任の板挟み。アフターパーツメーカー各社は現在、車検対応の静音性と伝統のスタイリングを両立させる新パーツの開発など、文化存続を懸けた綱渡りの挑戦を続けている。