十代目坂東三津五郎を語る上で欠かせないのが、歌舞伎の枠に収まらない多彩な表現活動です。歌舞伎座の舞台では、十八番である『喜撰』『助六』『義経千本桜』などにおいて、理知的な解釈に裏打ちされた無駄のない美しい身のこなしを披露。「踊りの三津五郎」の異名は歌舞伎界内外に広く知れ渡っていました。
テレビドラマにおける名バイプレイヤーとしての活躍も鮮烈でした。代表作であるNHK大河ドラマ『功名が辻』の細川幽斎役では、武将でありながら一流の文化人という複雑な役どころを風格たっぷりに好演。『新選組!』やTBS系ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』、映画『武士の一分』などでも、深みのある演技で物語を引き締めました。
また、芸能界きっての「お城マニア」としても著名で、城郭の構造や歴史的背景を軽快かつ論理的に語る姿は教養番組でも大好評を博しました。伝統芸能の高みを極めながら、大衆文化へも柔軟に降り立つそのバランス感覚こそ、三津五郎が多くの人々に愛された最大の理由でした。